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《みことば》 「ユダヤ人の王」
《聖  書》 ルカによる福音書 23:35-43

 イエスがユダヤ人の王とみなされていた事は聖書のいくつかの箇所に見られます。当時の人々は、自分たちの中からローマの支配を打ち破って、独立の王国を建てる王が出ると期待していました。イエスが民衆の中で色々な不思議なわざを行なった時、人々はイエスを王にしようと考えました(ヨハネ6:15)。当時の支配者たちは、人々がイエスに対してユダヤ人の王として期待している事にいらだちを覚えていました。イエスは自分たちの地位をおびやかす者だったのです。
 イエス自身が望んでいなくても、イエスがユダヤ人の王になるだろうと思われていました。イエスの十字架上に書かれた罪状書には「ユダヤ人の王・ナザレのイエス」とありました。この事はイエスが政治犯として殺された事を示しています。当時、革命を起こす前に支配者の手によって政治犯として捕らえられた人がたびたび現われました。支配者たちは自分たちの地位を守るためにも、本人が意図しているかいないかにかかわらず、未然に革命を防ごうとします。イエスが十字架刑で殺されたのもこのような支配者の態度によるものだと考えられます。
 ピラトがイエスをどのようにして尋問したかはっきりわかりませんが、その質問は、ただ「あなたはユダヤ人の王か」という点にしぼられていたと思います。イエスを訴えた人たちもこの点を非難していました。
 しかし、イエスが自らをユダヤ人の王とみなしていたとは考えられません。むしろ、十字架の死によってこうした期待を打ち砕いたのです。

王であるキリストの祭日C年(瀧野正三郎)
[こじか1980.11.23号掲載文を加筆修正]

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