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《みことば》 「マタイによる福音書」
《聖  書》 マタイによる福音書 2:1-12

 マタイによる福音書は紀元後70年のエルサレム陥落以後に書かれたと考えられています。この福音書も、神の子イエス・キリストへの信仰を、地上のイエスの生涯に結びつけようとするマルコによる福音書の意図を受けついでいます。
 しかし、この福音書記者が用いた資料は、マルコによる福音書だけではなく、ルカによる福音書も使っていますQ資料というイエスの言葉を集めたものと、さらにマタイによる福音書だけの特殊な資料によっています。
 この福音書の特徴は、イエスこそユダヤ人が待望していたメシアであると描いている事です。イエスにおいて、旧約の預言者が言った事が実現したという主張が繰り返し出てきます。
 このメシアはユダヤ人の指導者たちによって拒否され、ユダヤ人のみならず、異邦人にも福音が伝えられるようになります。つまり、新しい神の民である教会には、ユダヤ人も異邦人も共に含まれています。そして、異邦人への宣教がイエスの意志に基づいている事が示されています。この事から、この福音書は、ヘレニズム地域のユダヤ人キリスト者の教会で作られ、ユダヤ人への宣教と異邦人への宣教の対立を解消する意図があったと考えられています。
 この福音書では、パウロの手紙やマルコによる福音書と違って、「福音」をイエス・キリストが宣教した内容として語っています。つまり、イエスが伝えた「御国(天の国)」が福音なのです。このようにして、「福音」が現実に生きたイエスの姿から、抽象的な教えに変化していきました。イエスは新しい「義の教師」として描かれています(5章〜7章)。そして、自分たちキリスト教徒こそイスラエルの民の一番正当な継承者だと考えるようになっていきました。
 また、福音書の中で、この福音書だけが「教会」について述べています。この事から、この福音書を教会の伝統的な教えを語るものとして重要視する人もいます。

主の公現の祭日A年(瀧野正三郎)

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