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《みことば》 「イエスの死」
《聖  書》 マルコによる福音書 14:1-15:47

 イエスの死は十字架刑である以上政治的なものです。十字架刑はローマの反逆者に対する処刑法なのです。イエス自身がどう思っていようとも、支配者の側にしてみれば、反政府運動をしている男と見えたのです。
 では、イエス自身はどのような考えで行動したのでしょうか。イエスは自分からすすんでメシア(キリスト)であると発言したことはありませんでした。又、当時の支配者であったローマの軍隊を打ち破って、新しい国を作ろうという考えも持っていませんでした。
 イエスは当時の政治と宗教のしくみによって差別され「罪人」とみなされていた人々と共にあって、人間が人間として生きることができるよう求め続けました。しかし、その結果差別をつくりだしている当時の支配者たちを批判することになり、律法についての論争や、神殿についての論争に発展していきました。
 このようなイエスの言葉と行動は、当時のユダヤの支配者から見れば、エルサレムの神殿を中心にした体制をくつがえそうとするものと受けとめられ、又、ローマの支配者から見れば、民族独立の動きとして受けとめられました。こうした支配者の考えにより、イエスは政治犯として十字架にかけられて殺されました。
 このようなことは、世界中のどこの国でもしばしば起こることです。自分は政治には関心がないと主張し、ただ一人一人の人間を大切にしていくように求めて行動していた人が、政府によって犯罪者とみなされて牢にほうりこまれ、イエスと同じように政治犯として裁かれるのです。
 私たちも、イエスと同じように政治犯として殺されることを恐れないで、一人一人の人間が大切にされる社会を築いていくように努力しましょう。

受難の主日B年(瀧野正三郎)
[こじか1976.4.11号掲載文を加筆修正]

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