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《みことば》 「使徒言行録」
《聖  書》 使徒言行録 4:32-35

使徒言行録

 聖書の中に、使徒たちの宣教の記事を伝えるものとして、「使徒言行録」があります。これは、ルカによる福音書とあわせて、もともと一つの本として書かれたと伝えられています。
 使徒言行録に出てくる主人公は、いったいだれでしょうか。ペトロやパウロやステファノは、あくまでも道具にしかすぎません。神の霊こそが主役です。神の霊である聖霊が教会を導いているという点こそ、記者が主張したかったことなのです。ですから、パウロがローマへいったあとどうなったかという点には興味を示さず、イエスについての宣教が、そのころの中心の都であったローマにまで達したことで満足して筆を止めているのです。
 さらに、神の救いの計画ははじめユダヤ人に向けられていたが、イエスをこばんで十字架にかけて殺したために、異邦人にむけられたことが強く主張されています。そのために、使徒の宣教は、はじめユダヤ人の中で行なわれていたけれど、迫害をきっかけにして、ユダヤ以外の世界に広まっていったことが、たくさんの記事を通して語られています。

初代教会

 イエスの死後まもなく弟子たちの集まりによって教会が設立されましたが、まだユダヤ教の枠内にとどまっていました。使徒言行録2:46などでわかるように、一般のユダヤ人と同じく、エルサレムにある神殿に参っていました。また3章以下にも記されているように、ぺトロたちは、神殿を中心にして、宣教活動を行なっていました。
 エルサレムにみられるキリスト教会は、今までどおりユダヤの習慣に従っていたので、ユダヤ教から迫害されることなく、ユダヤ教の一つの派としてみなされていました。
 最初のころの教会がどのようなものであったかはっきりと知ることができません。私たちは、使徒言行録や、パウロの手紙や、福音書の伝承過程を通して知られる知識からそれを推測するしかありません。
 使徒言行録4:32-35は、最初の頃の教会を理想的に描いています。まだ人数も少なく、一つの家庭のような形態をとっていたものと思われます。この記事から原始共産制を唱える人もいます。しかし、使徒言行録全体を通してわかるように、教会の中に分裂や対立があったことをふれずに、教会が聖霊の働きのもとに、一つに結ばれていたことを強調しています。その典型的な描写がこのような記事として描かれているのです。5章以下の記事でもわかるように、全財産を売り払って共同生活をしていたわけではありませんでした。

復活節第2主日B年第1朗読(瀧野正三郎)
[こじか1979.4.22号掲載文を加筆修正]

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