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《みことば》 「援助」
《聖  書》 ルカによる福音書 16:1-13

富める国と貧しい国  現在の世界全体を見回すと、富の分配について不均衡があります。これは縮まるどころか、ますますその差が広がるばかりです。富を持っている国はますます豊かになり、富のない貧しい国はますます貧しくなっています。
 富を持っている国の人たちはこの状態について、「貧しいのは人々がなまけものだからだ。もっと努力して先進国に追いつかなくてはいけない」と非難しています。
 日本は今や富める国の仲間入りをしていますが、以前は違いました。欧米の国々に追いつくために、国をあげて富国強兵政策を行ないました。今、アジアの国々は、日本に習えとばかりに富国強兵政策を行なっています。確かに、これらの国々の国民生産はどんどん伸びてきています。
 しかし、その裏には多くの人々の犠牲があります。日本の富国強兵政策を支えたのは、女工哀史で知られているように、若い女性労働者を使って利益をあげた製糸産業でした。
 今や同じ事をアジアの各国政府が行なっています。日本がかつて歩んだと同じ道を走り続けています。しかも、この国の政策を後ろから支えているのは日本の政府と企業です。日本の企業は安い労働力を求めて海外へ進出しています。日本の企業の工場であげられた利益の大半は、日本の企業と各国政府の手に入り、悪い労働条件のもとで働かされている労働者の手元には、わずかの分配があるだけです。
 日本が富める国でいられるのも、こうした国の開発の名のもとに日本の企業が膨大な利益をあげているからです。

援助

 富める国は貧しい国に援助の名のもとに資金を融資していますが、もともとこれらの国々から奪った利益を返しているにすぎません。これらの国々は、富める国から融資を受けた金で、高い製品を買わされてしまうので、結局は富める国に金が流れていくだけです。
 こうして見ると、本当の援助のためには、人々が自分たちの力で国を作っていけるように技術的な面での援助が必要なのです。ただ単にトラックターなどを援助の名のもとに送っても、結局は修理できないで無駄になってしまいます。
 富の不均衡をなくすためには、まず正当な価格で資源や労働力を買う事から始めなければなりません。今までのように不当に安い価格で買い続けているかぎり、援助という名のもとで何をしてもごまかしにすぎません。
 富をごく一部の人たちだけで所有するのでなく、公平に分配してこそ、一人一人の人間の価値が認められる事になるのです。富の使い方によっては、金で買えないものを得る事ができるはずです。

年間第25主日C年(瀧野正三郎)
[こじか1980.9.21号掲載文を加筆修正]

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