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《みことば》 「分裂」
《聖  書》 ルカによる福音書 12・49〜53

黙っているいることは現状を認めること

 映画「四万十川」を見に行った時、ある場面で強い印象を受けました。
 一番下の弟は気のやさしい子で今まであまりけんかもしたことがありませんでした。ある日学校で、家が貧しくて弁当のおかずも買えなくて、ご飯だけを弁当箱に入れて来ていた女の子が、みんなから笑い者にされていました。その時、弟は黙って見ているだけでした。
 家に帰った時、姉が弟に「たとえその時笑わなかっても、黙って見ていれば、笑った者と同じや」と言いました。弟は姉の言葉に励まされて、次ぎの機会には女の子をかばってけんかまでしてしまいました。先生はけんかの原因をよく調べず、ただけんかを起こした弟を責めるだけでした。

分裂

 私たちは、ふだんの生活でこれはおかしいなと思っていても、こんなことを言ったらお互い気まずくなるなと考えてしまって、何も言わずにすごしてしまうことがよくあると思います。
 でも、イエスの呼びかけは、ただ表面的に平和を守っていればよいとは言っていません。むしろ、分裂を恐れるなと言っています。たとえ、親しい人と対立することがあっても、福音的価値観に従って、はっきりと発言すべき時は発言するように求めています。
 利益だけを求める社会の価値観と、人間一人一人を大切にしていこうとする福音的価値観とが対立するのはあたりまえのことです。分裂を恐れていては、福音的価値観に従って歩むことはできません。

年間第20主日C年(瀧野正三郎)

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