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《みことば》 「カナン」
《聖  書》 マタイによる福音書 15:21-28

カナン

 カナンの地は、イスラエルの民がエジプトを脱出して後に定着したところです。イスラエルの民が侵入する前に、すでにカナンびとが住んでいました。しかし、この人々についての資料は今まであまりありませんでしたが、1925年以後の発掘による考古学の研究から、東地中海の文化の拠点としてウガリット(紀元前2千年頃)が栄えていたことが判明しています。
 発見されたウガリットの叙事詩には神々の物語が伝えられており、主神エルの子バアルは豊作を与えてくれる神、雨・嵐の神として描かれています。今まで遊牧生活していたイスラエルの民が土地に定着し農耕を始めると、このカナンの神の影響を受けることになります。多くの人が神から離れてしまったので、預言者たちはイスラエルの民が自分たちの神に立ち帰るように繰り返し警告を与えています。

カナンの女の物語

 カナンの女の物語の主題は、キリスト教の宣教はイスラエルの民だけに限定されるのでなく、異邦人をも対象にすべきだということです。イエスは当時の支配者たちの批判を恐れず、ユダヤ人も異邦人も区別なく接していきました。
 しかし、マタイによる福音書では、ユダヤ人キリスト者に配慮して、宣教はまずイスラエルの民が優先されると伝えられています。それは、マルコによる福音書の平行箇所には伝えられていない、「わたしは、イスラエルの家の失われた羊のところにしか遣わされていない」という言葉で明確に表わされています。
 マタイによる福音書が書かれた当時、すでにキリスト教がユダヤ人以外に広まり、ユダヤ人キリスト者から不満が出ていました。そこで、ユダヤ人キリスト者を説得するためにマタイによる福音書が書かれたと考えられています。
 私たちは、どうしても自分たちだけが正しいと考えてしまう傾向があります。しかし、神の働きは私たちの考えよりも広いことを理解し、広い心を持つことが必要です。

年間第20主日A年(瀧野正三郎)

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