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《みことば》 「福音」
《聖  書》 マルコによる福音書 1:14-20

福音

 福音という言葉は、あまりにもよく使われすぎていて、その意味があいまいになりがちです。新約聖書の中でも使い方の違いがみられます。
 「神の国の福音」という表現は、マタイとルカによる福音書で使われ、マルコによる福音書とパウロの手紙では、イエスが福音であると主張しています。特にマルコでは、イエスの言葉とわざが福音として強く述べられています。もちろん、マルコでもイエスが神の国について述べたことを伝えています。
 又、ルカでは常に「福音を告げ知らせる」という表現が使われていて、福音とは述べ伝えられるべきものとして考えられています。この考えはずっと教会の中の伝統的な考えになっていました。私たちキリスト者が福音を持っていて、まだ福音を知らない人々に福音を分け与えていこうという姿勢なのです。「布教」という言葉もこの意味で使われてきました。

福音であるイエス

 マルコによる福音書では、マタイとかルカのように、イエスの教えをあまり伝えていません。むしろ、イエスの行ないを簡単に述べています。マルコではイエスそのものが福音なのです。
 イエスは当時の社会の中で罪人とみなされ、神からも見離された人としてみんなからのけものにされている人々の所に行って、あなた方こそ神に招かれた人々だと言って回ります。 福音はどこか別の所にあるのではなく、すでに人々の中にあるのです。ただそれが隠されていて、人々が気づかないだけなのです。
 私たちの役割は福音を伝えるのでなく、福音を発見することなのです。一人一人が隠し持っている宝物を見つけ、これこそ福音だと言って回ることなのです。
 マルコが他の福音と比べて簡単なのは、よけいな説明はいらないと思ったからでしょう。イエスのありのままの姿をできるだけ伝えたかったにちがいありません。

年間第3主日B年(瀧野正三郎)
[こじか1975.12.7号掲載文を加筆修正]

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