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《みことば》 「ヨハネによる福音書」
《聖  書》 ヨハネによる福音書 2:1-11

ヨハネによる福音書

 ヨハネによる福音書が書かれたのは、一世紀の終りの九十年代と考えられています。その頃になると、イエスがキリストであるかどうかという点に関心がおかれなくなりました。
 最初の福音書としてマルコによる福音書が書かれた頃は、イエスが神の子であり、キリストなんだという点に関心がおかれていたのです。そこではむしろ、イエスの行動のうちに、栄光にあげられたイエスの姿を見つけようとしました。つまり、ガリラヤで民衆と共に行動されたイエスの姿の中に、神の子としてのキリストの姿を見いだそうとしたのです。
 この努力によって、イエス・キリストに対する信仰が、信仰箇条を信じるか、信じないかという教義的な面から解放されて、もっと日常生活と結びついた信仰へと導かれていきました。信仰とは、イエス・キリストを信じるか、信じないかという点ではなく、むしろイエスに従うかどうかという点に問題があることを明らかにしました。
 こうして、復活したイエスとの出会いは、まさにガリラヤで行動したイエスの姿を知ることによって強められていったのです。
 しかし、ヨハネによる福音書が書かれた頃になると、直接にイエスを見た者がほとんどいなくなり、ガリラヤのイエスは過去の人となってしまいつつありました。そこで、過去のイエスではなく、現代に生きているイエスを描く必要がでてきたのです。

ヨハネによる福音書に見られるしるし

 ヨハネによる福音書においては、共観福音書(マタイ、マルコ、ルカによる福音書)において奇跡として伝えられていたものを、「しるし」として伝えています。
 奇跡物語は、ただ単に過去に生きたイエスの偉大な行動ではなく、現代でもおこりうる物語として伝えられる必要がでてきたのです。それは、過去に生きたイエスの奇跡ではなく、今も復活して生きているイエスのしるしなのです。現代に生きている弟子である私たちは、このしるしを見て信じなければいけないのです。

年間第2主日C年(瀧野正三郎)
[こじか1980.1.20号掲載文を加筆修正]

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